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覚え書き「さらば青春、されど青春」感想(2)この映画を潜在意識に刷り込むことに成功した人は、その気がなくても成功する

(2)この映画を潜在意識に刷り込むことに成功した人は、その気がなくても成功する

 この映画は、実利的に見た人を成功させる映画である。
 要は、この映画の中には、
 「どうしたら世界的な思想を残す思想家になれるか」
 「どうしたら成功者となるか」
 という問いの答が描かれているからである。
 一言で言えば、その答は、努力、努力、努力である。
 ひたすら本を読み、書き写し、カードを取り、くりかえす。
 社会に出たならば、松下幸之助語録にあるように「給料の十倍働く」。よく頭を下げては努力を繰り返す。
 映画に描かれていない成功のポイントがあるとしたら「体力の涵養」だろう。主人公は若さに任せて明け方までいつも仕事をし、著作をまとめる。
 その出発点には、つねに「自分って、平凡だよなあ」「天才ではないよなあ」というしみじみとした自覚であり、高ぶることもおごることもない淡々とした精神である。
 昔から「やくざ映画を見た映画館から出てくる人は、ヤクザのごとく肩をいからして出てくる」と言われたものだった。
 映画の作用として、見た人が主人公に影響を受け、世界観に影響を受ける。
 ならば、この映画を繰り返し、繰り返し、我がものとせんと思い、大スクリーンで潜在意識にまで刷り込むことに成功した人は、このあとの人生で、高ぶることなく淡々としてひたすら学び、仕事をする姿に近づくことだろう。
 教祖の姿に、姿勢に近づくことで、自らも精神的・あるいはこの世的な成功を得る。
 それこそが、宗教の始祖の教祖伝を読むことの1つの大きな効用のはずだ。
 この映画は、その意味で、映画史上かつてない「人を成功に導く映画」と言えるのではないだろうか。

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