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映画「ドラゴン・ハート」感想(4) この映画で一番胃が痛くなるシーン&ショッキングなシーンは、地獄に行く前の数分間でした

 昨日、リクエストされた方からメールが来ました。
 「続きが楽しみです」
 ……そのお言葉で続きを書くことになりました。
 喫茶店でリクエスト主にお話しを続ける感じで続けさせていただきます。


 前回の続き。

「おこっつぁーーーーーん!!」

 ……川で叫んでいる主人公の典坐くん。

 昭和なシーンですが、
 聖書で言う「幼子のように」って、こういうことなんだよ、という
 ある意味、無意識に行われた人間の信仰の姿みたいなものだと思いましたね。
 
 ……ただお山さまがある。
 巨大な存在がそこにいるのが嬉しくて、大きな存在に対して大声出して挨拶したくて、人目も気にせず叫んでる。
 ギラギラする欲望をかなえて貰うためでも、誰かに褒めて貰うためでもない。
  ……その欲のなさ純真さにお山様もニッコリ。
 神様から見たら、こういう子たち、いとおしい。
 (今時、神様に大声出して叫ぶ子供なんていないでしょうしねぇ)

 この呼び声があとあとの神様からの「呼んでいただろうが」という台詞につながるんですね。
 (余談、「令和のダラさん」っていう漫画があって1話から楽しみに読んでるんですけど、ちょっとあれもそんなところがあるように思いますね)

 結局、この純真さゆえに、この子たちは死なずにすんだ。
 まあ、ここで子供たちが叫んでなくとも、あの神様なら、純真な心の子供たちを助けてはくれたと思うんですけど、ここでの「おこっつぁーん」は、
 「宗教的な知識などなくとも、幼子のごときこころを持つ者が救われる」ことを象徴するシナリオになってますよね。

 そして出ました。河童です。
 この河童がねえ……。
 一度見たら忘れられない顔の河童です。
 すごい存在感です。
 なのに、河童はここにしか出てこないんですよ。
 見終わって「あれ? 河童は? ねえ、あの存在感のカタマリみたいな河童は?」と思ったんですけど、
 これ多分、
 芥川龍之介先生ご本人なんじゃないですかね?
 いわば映画でよくある、作者自身の「カメオ出演」的な。
 主人公くんとイトコちゃんを物語の奥に引き込むために、芥川先生が出てきたわけです。
 そう考えると腑に落ちる。
 (もうお一方、芥川先生のカメオ出演なキャラがいるんじゃないかと思います。続いたら書きますね)

 そしてまんまと主人公くんは後を追いかけ、その後を保護者的に追いかけたイトコちゃんが足を滑らせて水難事故から仮死状態に……って、ここちょっと待て!
 まてまてまてまて!
 典坐ああーっ!!!(←声優さんではなく主人公くんのこと)
 キミやないか! 死んだ原因!
 イトコちゃんがわざわざ河童を見つけて、そっちに行かないようにしようとしてたのに……「ヨシ!」じゃないよキミは現場ネコか!
 このシーンは思わず、思わずあちゃーってなってですね、
 「あかん、この子多動症やった、もう、この子のお父さんお母さんになんて報告したら良いの!」
 と反射的におじさんおばさんの気持ちになって、
 いやー、ストーリーはだいたい想像ついて、この先に救われるだろうとはわかるわけですけど、それでも
 全編で一番胃が痛くなりましたね。
 (ちなみに全国の学校の校長先生が一番「なくなればいいのに」と思ってる行事は修学旅行だそうですよ。わかるわー)

 ……で、親から目線はさておいて、どんどん流されていく二人、助けようと頑張る典坐くん。
 作画ばっちりです。気を失う顔が丁寧に書かれてます。
 特に、昏い水の画面に浮かぶ二人。
 劇場で見ると、ほんとに大きな大画面の昏い淵に二人だけで浮かぶ姿。
 こんな真っ暗で深い淵……。
……四国ってば島で、どの川も短くてあっという間に海についちゃうから水がたっぷり溜められないので小麦作ってうどんが美味いとこですよ。こんな深い淵が川にホイホイできるわけがない。
 もう、この世ではないんですよね。
 こういう描き方はわりとアニメではポピュラーな気がします。
 「竜とそばかすの姫」の昏い背景に浮かぶシーンもそうだし、去年のアニメ「となりの妖怪さん」9話によく似たシーンがあって、小学生の美少女河童ちゃんが同級生の男の子が川の異界にはまったのを助けに行くシーン。
 虚無のような濃い群青の中に、人がぽつりと無力に浮いている。
 大画面で見るとこういう絵は圧巻だなと思いますね。

 ……からの、竜のご登場。
 飛翔感!! 飛翔感まったなし!
 飛ぶよ! 飛翔するよ!!
 宮崎アニメの「風」、新海アニメの「空」、その手法を取り込んで、美術だけじゃなくて、動画作画もいいお仕事してる! とわかるシーンです。
 ここでは劇伴がまたしてもいい仕事してくれてます。 ( 歌は……うん、これは信者さんの精神修養に使われることもあって、まあ、ちょっと人を選びます)
 竜のデザイン、賛否はありましょうが、全体像に関して小生は好きです。
 薄布がまといついた足下は、「単なるモンスターではないぞよ」と表しているのではないと思います。
 それだけじゃなくてですねえ。
 この映画の竜を見てて、ひそかに胸にぐっとくる理由がありましてですね。
 それは、
 あの上から竜の滑走をとらえてる映像は、昔の名作アーケードゲーム、「ドラゴンスピリット」をまざまざと思い出させるんですよ!
 あのワクワク感! 特に、後半のシーンで洞庭湖にはいるあたり、「ドラゴンスピリット」まんまに見えましたよ!
 大画面で見る「ドラゴンスピリット」……スタッフさん、ありがとうううう!!!

 竜に拾われた二人、助かったけど体が透けてる。
 驚く二人の前に現れたのは、
 個人的にこの映画最大の衝撃。

 「ワシじゃよ」

 うえああわああっ、チバシゲさんーーーーーっっっ!?!?

 神様の声、千葉繁さんに聞こえんだけど!?!?
 え、ご本人!? うそご本人なんですか!?!?

 ……
 ……
 ……もうね。もう、この衝撃で全部すっ飛びました。
 あんまりびっくりして座席から立ち上がるところでしたよ!

 千葉先生えええ!?!?

 簡単に説明しますと会員さんはおろか若いアニメファンは知らないでしょうけど、うる星やつらのメガネやパトレイバーのシゲさんや北斗の拳の爆散役や、最近だと野球拳の吸血鬼とかもさることながら、押井カントクの初期実写版「赤い眼鏡」「トーキングヘッド」もよくてですね、小生あれをレンタルビデオ屋で借りて「かっこいいなぁ、映画の意味はわかんねぇけど、チバシゲさんがめちゃかっこいいなぁ」って見惚れてわけわかんないけど繰り返して見たぐらい存在感がある方なんですよ! この方は天才ですよ。ポプテピピックに出たときにも「同じ内容を声優変えて二回やったらって、自分もずいぶん前に考えた」っておっしゃってました。ええそーです、芝居が上手いだけじゃなくてすごく豊かな発想をお持ちの方なんですよ!
 (なんか今すごく早口でしゃべったような気がします)

 ……上記、大部分の方に読み飛ばされた気がします。
 言い直します。

 一言で言うと、ものっっっすごい名優です。

 それが……徹頭徹尾、真 面 目 な神様の役を!

 この方の担当してきたキャラの印象が強くて、「いつこの神様が、爆散したり野球拳始めたりしてもおかしくない!」 と身構えながら聞いているこちらですが……

 それを良い意味で完全に裏切るんですよチバシゲさんが!

 すっごく良い声で!

 登場第一声の「ワシじゃよ」は、ダブルミーニングで、空飛ぶ鷲と自称のわしの意味をかけた「人をくった」台詞。
 そしてですね。
 この一言は、自分を何の欲もなく見栄もなく慕ってくれた子供たちに、ひょっこりと理由も告げずに出向いてやって声をかける、最初のひとことな訳です。
 そらッとぼけた感じ、どことなく面白がってる感じ、守りに来たぞ、という感じ。
 全部こもっていて、それでいて、
 暖かい。
 声がものすごく、暖かい。
 本当に「純真な子供たちを見てて、彼らがヤバくなったら助けに現れた、本当はおっかないけどとぼけた風の神様の暖かい声」そのものです。
 (「令和のダラさん」で言えばダラさんの役回りな訳ですよ)

 幸せ!! 耳が幸せ! 

 えっ!?!? これ!? いいの!?
 ほとんどのアニメファン、知らないよ!? 
 こんな名演、会員だけで独占していいの?!

 いや、そもそも、なんで千葉繁さんが幸福の科学の映画に出てくださっているんですか!( ……なんかすっっっごく距離がありそうな取り合わせなんですけど…… )
ほんとになんで!?!?
 
 なにかコメントが載っていないか、と、チバシゲさんのコメントを探すためだけに劇場のパンフ(高かった!)を買い解説本も買いましたが、全部空振りでした。
 
ただ、声優さんの紹介でこの方だけは「レジェンド声優」というワードがついていて、うんうん、スタッフ、わかってますよね、としか…… (結局「 レ ジ ェ ン ド 声 優」の七文字のためにパンフに1000円払ったことに)

 うーん、大川総裁が

 「当会の映画に関して、とあるアニメ映画祭で
 『これは宗教団体の映画だから上映を外そう』
 としたんだけど、声優陣が豪華すぎて上映することになった」

 という話を、すっっっごく面白そうにおっしゃっていたのを覚えてます。

 「幸福の科学の映画は金払いがいい」

 ともおっしゃってましたしね。そのことと何か関係があるのか……映画最大の謎です。

 とりあえず呆然としている小生を置いてけぼりにして、話は進んでいきます。
 主人公たちはここで、鳴らない鈴をさずかって、もう一度体にもどるための糸口を見つけるために地獄界探訪を始めます。

 まあ「死後の世界」と申しますが、そんな大げさな物でも何でもなく、死ねばみんないくことになってるんで珍しくもなんともないという気がするんですけどねぇ。(「補習」の刑期はちょっとでも縮めたいとは思いますが)
 年寄りと違って、十代の子供たちにとって、死は遠いものなのか……いや、年齢に関係なく、死後の世界との距離感は、たぶん、人によるのでしょうね。

 ……なんか、だんだん、映画スタッフと教団の人と熱烈信者の皆さんから怒られそうな内容になってきました。
 ……ラストシーンの阿波踊りのごとく、無礼講のノリでお許しいただきたく思います。

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