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2010-11

日本鬼子(ひのもと おにこ) を知っていますか?

   ※沖縄知事選の投票日は11月28日です。引き続き、ご検討をお祈り申し上げます。

 さて、今日は実現党や政局とあまり関係がない、あえて言うなら、大川総裁の主張と関連づけるならば、「中国の、内部からの民主化」……もしくは、「日中間のオタクたちの文化交流」に関して面白いニュースがあったので、その件に関してのご紹介。

 中国の人の反日感情は、すさまじい。民間のすみずみにまで、それは行き渡っている。「日本に旅行に行きたいんだけど、殺されないか心配」と本気で言うほど日本人は残虐非道で悪の権化だと刷り込まれているのだ。
 一体、この国の人達と、話など通じるものか、同じ趣味について語らうような未来が、本当に来るのだろうか……時折、正直、絶望的になることがある。
 だが、この11月、なんとも世界史上、類のないことを、日本の「オタク」と呼ばれる諸氏がやってみせた。
 すでに、台湾のテレビではニュースとして流されたそうである。
 日本のみなさん、
 「日本鬼子」
 をご存知だろうか。
 中国語でリーベングイズ、と読む。
 これは、中国人の、日本人に対するすさまじい蔑称。

 中国の人々は、すでに教科書やプロパガンダによって、日本人がいかに悪党かを教え込まれており、「南京入城」を「大虐殺」と称し、いまだに北京大学に、毎年毎年、日本人の残虐写真をでかでかと何枚も展示している。
 国自体で日本を憎んでいる。
 それを凝縮したかのようなこの単語が、「日本鬼子」。
 ほかにも日本に対しては、
 「小日本」「倭猿」
 などという蔑称がある。
 小生などは、長らくこの文字を目にするだけで心の平静が吹き飛ぶほど怒ってきた。
 ところが……。
 日本のオタク達は、このイメージを変えてしまったのである。

 ことの発端は、つい先日、日本のネットの掲示板に、ふらっと
 「日本鬼子って萌えキャラ作って中国人を萌え萌えにしようぜ」
 というタイトルの板が立てられたこと。
 「『日本鬼子』を『ひのもと おにこ』という名前に読み替えて、可愛い女の子のキャラクターを作ってしまおう。
  そうすれば、中国人の反日デモで『日本鬼子』の文字を掲げている度に、そっちの女の子の方を思い出して、オタクがデモをしているようで笑えるじゃないか」、という。
 ……うわ。その発想はなかったわ。
 掲示板の雰囲気を知らない人は、「なんだなんだ。一体、なんでこんな話になった」と、意外に思う人もいるだろうが、掲示板を見慣れている人にとっては、単に一種の「洒落」だと推測がつく。
 じつは、日本の巨大掲示板には、今までも、むちゃくちゃなお題を振っては、それに対して、よってたかって絵を描いたり、ああだこうだ言ったりして楽しむカルチャーがある。
 たとえば、
 『サザエさんを萌えキャラ化してくれ』
 とか、
 『「はだしのゲン」(←有名な反戦漫画。かなり野暮ったい絵)の女の子を萌えキャラ化してみてくれないか』
 とかいったたぐいの掲示板が立てられては、遊び心満載のその「お題」に、たくさんの「絵師」が集まり、プロ並みにクオリティの高い絵が投稿されて、見る人を大笑いさせ、かつ唸らせる。お馬鹿な企画には事欠かない連中なのである。
 はたして、このたびも、「ひのもと おにこ」のお題が振られるや否や、
 あれよあれよという間にクオリティの高い「ひのもとおにこ」嬢の萌え絵がどしどし書いてアップされた。
 しかも、同様の蔑称であった
 「小日本」は
 「こにぽん」
 と愛らしく読み替えられて、なんとも愛くるしい幼女のキャラになってしまった。
 「倭猿」は 「わざる」として、お猿のキャラクターになっている。
、やがて、数百枚は軽く超えるであろうさまざまな「ひのもと おにこ」が出現。(しつこいようだが、その大多数がプロ並みのクオリティ)
 ついにファンの間で「公式設定」の投票が行われるわ、キャラクターソングを作り出す人はいるわで、冬の同人誌即売会では絶対に「ひのもと おにこ」本を作る人が出てくるであろうし、自主製作でアニメが作られ、ニコニコ動画にアップされるのは時間の問題であろう。
 もはや一つのジャンルと化してしまった。
 この現象に、海外の人々が驚いたのも無理はない。
 中国の人の、呆然としたとか、脱力感を感じたというコメントも書いてある。(←気持ちは分かる)
 海外のサイトでやりとりされた会話を翻訳した動画がユーチューブにあがっている。
 思わず、「けしからん、もっとやれ!」と言いたくなるそれらのイラストをバックに、海外の衆のコメントが満載。
 背景に使われている絵は、日本人の「絵師」たちがさまざまに描いた「ひのもと おにこ」。
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 事の発端の掲示板がまとめられた動画になっている、「ニコニコ動画」はこちら

 リンクは http://www.nicovideo.jp/watch/nm12561592
 動画終了後、「中国の反応」→「海外の反応」へと飛びます)
●台湾のテレビで報道された「ひのもと おにこ」のニュース
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●状況が詳しく分かるニコニコ大百科の「ひのもと おにこ」説明
http://dic.nicovideo.jp/a/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%AC%BC%E5%AD%90
●「鬼子ちゃんアップローダー」に数百枚のイラストがあがっている、「ひのもと おにこ」まとめwiki
http://www16.atwiki.jp/hinomotooniko/pages/1.html

 ……凄い。
 小生、寡聞にして、世界史上で、
 「自国へ加えられた、最大級の激しい蔑称を、愛らしい少女のキャラクターにして発信することが流行る」
 などという珍芸をやった国民の話を、これまで聞いたことがない。

 聖書には、
 「激しい言葉に対しては沈黙で返せ」
 という一節がある。難しい言葉だ。小生にとっては努力しても、努力してもうまくいかない難題である。
 ところがなんと、日本の若者たちは、自国への侮蔑の単語を無力化し、何の怨恨も生まないものに変えてしまうどころか、
 高度に洗練された世界一の作画技術で、目を楽しませるエンターテイメントにとりこんでしまったのだ。
 これに関して、
 「嘆かわしいにもほどがある。日本人はもっともっと怒るべきだ」
 という声もあるだろう。
 しかし、裏を返せば、これは、すさまじい文化度の高さ、とは言えはしまいか。
 もしも、中国が、報復に、この洒落の「返歌」をしようとしたら、日本以上の洒脱な技術を持って文化をつくるしかないだろう。
 だが、おそらく中国はおろか、世界中のどこの国にも、そんなことができる国はない。
 あらためて、日本の文化度を思い知った。
 世界中、どこの国で、
 「なあ、みんなー、日本鬼子ちゃんっていう女の子のキャラクターつくろうぜー」
 と、名前も知らないどこかの誰かが一声発しただけで、なんの金銭的得もないのに、その場で、プロと同レベルのイラストが次々に集まってくるだろうか。
 それらの絵師の中には、仕事や学校のかたわら、同人誌活動に命を賭けている人たちもいるだろうが、少なからずニートといわれる人が混じっているはずであり、「働いたら負けでござる」とか言いながら、趣味で絵を描き、自作アニメを作り、音楽を作り、創作小説を書き、ニコニコ動画やYouTubeに投稿している人たちも少なくないだろうと察する。
 この、「食うに困らない趣味人が大量に出て、ものすごく高い文化を創り上げている」状況……これは、日本史の記述で見たことがある。
 江戸時代。「元禄」と呼ばれる時期がそうではなかったか。
 豊かで、平和で、教育が高くなければ起きえない現象だ。

 しかも、江戸の「粋」(いき)より、遥かに洗練されている感がある。
 このプロジェクトには、なんら怒りや怨みの色がない。

 これらの絵を描いてアップした人たちは、中国のやり方を知らないはずがない。
 インターネットを使っている以上、彼らは国防に関しては、マスコミの洗脳を脱している。
 彼らは、みな中国のやり方が不当だと思っているのである。
 あの国のやり方、そして人々を弾圧するシステムは、絶対に許せないと思っているのである。
 だが、それに対して、「返礼だ」とばかり中国人を襲ったり、日本の中華街で暴動を起こしたりはしない。
 そんな無粋なやり方ではなく、憎悪の言葉そのものを無力化し、自らも楽しんでしまうセンスが、彼らにはごく自然に備わっている。

 このやり方には、「粋」(いき)を感じる。
 洗練を感じる。
 これこそがある意味、教育・教養の高みではないか、と思うのだ。
 あらためて、日本は良い国だなあ、と痛感する。
 さすが、大地震の後で暴動が起きることなく、人々が列を作ってマーケットで買い物をしていた国である。

 そういえば、あまり有名ではないが、これに似た件が、ことしの3月にあった。
 韓国のサイバーテロ。
 韓国からすさまじい悪意がネットを通じてあびせられたあの事件のときに、ネットのオタクたちは何をしたか。
 彼らは、なぜか
 「腹いせに募金テロしようぜ」
 と、呼びかけて、赤十字のチリの災害募金口座に対して、大規模な募金運動を行ったのである。
 彼らは全員で801円、あるいは801に関する数字の募金を行った。
 (この「801」という数字は「やおい」と読み、女性を中心に支持されている、ゲイを題材にして繊細な感性の世界を描いたジャンルの総称。つまり、数字も、韓国とは何の関係もない、単なるネット隠語を使った「洒落」なのである)
 募金の総額は百四十万を超え、八万円以上を寄付した人もいたようである。
 それぞれが送金した控えをデジカメ等で撮影し、集めた動画はこちら
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 (なお、この動画に使われている音楽と映像は、昨年日本で記録的に売れたアニメ「化物語」のエンディングであるが、この曲のボーカルはネットを舞台に自分の歌声を発表し続けた、いわば「ネットの歌姫」としてネットユーザーの支持を受け、デビューした女性。こんな才能が生まれてくる、日本のネット文化の高さがしのばれる)

 募金する流れになった掲示板のまとめ動画はこちら
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  これまた不思議な現象である。
 韓国が「俺達の力を世界に見せてやれ」といって日本人を苦しめたあとに、「それじゃ、日本の俺達も、いっちょ、うさばらしに力を見せようぜ」といって、全然関係のないチリの災害で苦しむ人に、大量の募金活動をしてみせたのだ。
 日本のオタクたち、たいしたものではないか。

 そして、話はかなり脱線したが、
 「日本鬼子」に関して、日中の若者たちの間に、壁をへだてて、なぜか交感がおきているように感じられる件について。

 上記ニコニコ動画の「中国の反応 編」を見ると、
 中国のオタクの人たちの書き込みは、全く日本のオタクと普通に会話できるレベルである。
 日本のこのお祭りに関して、
 いきなり、
 「こんなとき、どんな顔をすればいいか分からない……」
 という、有名なエヴァンゲリオンの台詞の引用からはじまって、
 「(デザインは)黒髪のロングで頼む」
 などという、洒落に対して洒落で返す書き込みがあった、という。
 それが日本語に翻訳されたのを読むや、日本人のオタクたちはというと、
 「中国のオタクとは解り合えるかも知れないってちょっと思ったわ 」
 「思ったより反応良くて笑った。こういう馬鹿が通じるレベルの文化ならさっさと 自由化して風通し良くしてしまえばいいのに 」
 と、掲示板で書いていた。

 ……なんだ。
 彼らは言語の壁さえなければ、日本のオタク文化を媒介に、いくらでも意気投合して話し続けられるのではないか。
 それは、流石にいまはまだ、お互いに、お互いの声は届けられない。
 こうやって、それぞれの掲示板で語った言葉を、ただお互いに翻訳するのみである。
 しかし、両国の若者達の間には、言論の統制がなくなれば、共通に語るべき文化があり、お互いの掲示板の翻訳を見ては、「上手い『返し』が書かれてる!」と膝を叩き、「おいおい、あっちの国にも『俺たち』がいるぞ!」と、共感し、笑いあえる「洒落」がある。
 オタクと呼ばれ若者達の間には、作品世界を通じてすでに共通の心のよりどころがある。
 彼らに、すでに壁はない。あとは彼の国の開放をまつだけなのだ。 
 大川総裁が「中国を民主化しなければならない。内側から、思想戦で変えていかなければならない」とことあるごとに語られるのが思い出される。
 国境を越えて、早く、何の心配もなくオタク談義にうち興じることのできる世界になることを切実に欲しているのは、おそらく我々よりも、中国の人々なのではあるまいか。

 ……そう考えると、少々、胸が熱くなる「日本鬼子」に関するトピックである。

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